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2007年6月 1日 (金)

受賞作二冊の感想と戦略考察

こんばんは。

ガガガ文庫の受賞作、マージナルと学園カゲキ! を読了しました。はっきり言って斜め読みに“なってしまった”のですが……。

二つの作品を読んでみて気がついたことがいくつかあります。まずは個別に簡単な感想をつけてみましょう。

・マージナル

 最初の数ページを読んだだけで読む気がうせる感じです。それと、禁則描写(してはいけない描写)がいろいろ見受けられます。ここでいう禁則とは、倫理観とかそういうことではなくて、例えば、登場人物Aが知りえない事実の描写をしているとか、そういう意味でしてはいけない描写があったことです。そのほかも、まあ、いろいろと(あからさまなご都合主義とか。読んでいて冷めます)。
 一方でよいと思える所もありました。作者さんが意図してやっているのかはわかりませんが、全体の構成は見事な変化を付けている。というか、ハウツー本で書かれている「作品の強弱」を付けていると思われる箇所がある。しかし、強弱を付ける事を目的としているのか、世界観が崩れている印象も受けました。キャラクターの性格も。よって、内容よりも構成に特筆すべき点があるという感じです。
 そして、この作品が受賞した理由を考えてみましたが、これは次に読んだ「学園カゲキ!」を読み終えて比較する事で感じました。
 それは、ポイント(要所)だけは丁寧に押さえてあるということです。といっても、ストーリーの内容に満足しているわけではありません。

・学園カゲキ!

 まず、この作品は「読者に押し付けんなよっ!」って感想です。通常、読書をしていると読者が世界に入りこんで楽しむのですが、これは文章の方が「ここはこうだから、理解しろ」と押し付けてきます。世界に入り込むことができない。そういう意味で、この本自体も「歌劇学園の提供するコンテンツ」だと考えた方が良いのでしょうか?
 それと、ご都合主義にも程があるって感じですね。BSカゲキの影響を差し引いても、ストーリー全体でご都合主義過ぎる。
 そして構成に関しては「マージナル」の方が上のように感じました。BSカゲキでストーリー全体をひっくり返そうという意図はわかりますが、あまりにベタ過ぎる。もう少しひねりがあっても良かったのではないでしょうか。
 オチに関してもなんとも評価しがたい。終わり方が「?」って感じです。
 それと、キャラクターの呼び方が揺れている印象を受けます。例えば、先生の氏名「有坂古都乃」が、次からの登場で古都乃と統一すればいいのに、有坂古都乃とフルネームで何回も出てきたり、何年何組の有坂古都乃とわざわざ余計な説明があったり……、気になりました。
 さて、この作品にも良い点があります。それは作者の成長がこの作品から感じられる点です。作品の最初の方と終わりの方では、明らかに作者の成長が感じられる。単に推敲が少ないだけかもしれませんが……。あるいは、後半がかなりベタなので書きやすかった可能性もあります。なんにせよ、その点が審査側に好印象を与えたのではないでしょうか。

 さて、総評ですが、どちらの作者も青田刈りしたって感じです。成長を期待しての受賞ではないでしょうか。小学館さんは今回の作品単体での戦略ということではないようです。創刊時の大々的な宣伝、書店への働きかけ、発行部数など、初期投資を惜しんでいません。この受賞作もその初期投資の一環のような気がします。どうやら小学館さんは本気でライトノベルに取り組んでいく姿勢があるようです。

 極論を言えば、この二作品は「人柱」かと。

 おそらく、読者の中には作家を目指している人、目の肥えたラノベ読者がたくさんいるはずです。そしてその中にはまだデビューしていない作家の原石もいます。その人たちから見たら、私と同じような、あるいは、私よりひどい感想を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、小学館さんの本当の目的はそこにあるのではないのかと思いました。そこそこのレベルに達した作家の卵なら、

「これなら自分の書いた作品の方がいい」

というように思うのではないでしょうか。次回の応募数が確実に増えると思います。つまり、第一回の募集ではレーベルのレベルや方向性など不明な点が多く、作家の卵たちの中には同時期に締め切りのある別の賞に応募した方もいたでしょう。ですが、今回の作品を読んで作家の卵たちの意識が確実に変わったはずです。

 そこが小学館さんの本当のねらい目ではないでしょうか。ラノベにあとから参入した時に一番問題になるのが「いい作家をたくさん確保したい」ということです。スーパーダッシュやMFなど、後参入組の現在の状況は電撃文庫になかなか勝てていない印象があります。しかもそれらが書店の棚を埋めています。

 これだけ後からの参入になると、より「いい作家」確保が重要になります。そのための戦略その1が、第一回受賞作の人柱ということなのではないでしょうか。だからこそ、成長が望める作家を確保したのかもしれません。大化けしたら儲けモノ、という感じでしょうか。

 これは、期待賞というユニークな賞の設置からも感じ取れます。

 ですから短期戦略ではなく、かなり長期スパンでの戦略のように感じます。ということは、小学館さんは「本気」です。本気でラノベ市場のシェアを狙っています。しかも小学館さんは豊富なコンテンツやノウハウを持っています。もちろんメディアミックス展開が視野に入っているでしょう。

 先日、某大手のキャラクターコンテンツ会社社長さんと話をする機会があったのですが、その社長さんは「キャラクタービジネスは、いかに売れるものを見分けられるかだ。最近はキャラクターの傾向が大きく変わり、流れも速いので難しい」とおっしゃっていました。

 その点、小学館さんには蓄積した情報とノウハウ、媒体、コネがあります。出版不況下において、まずは自分達の得意領域(低年齢層)のすぐ上にある層を開拓していこうということなのかもしれません。

 さて、今度はルルル文庫を読み始めようと思います。その感想は公開するかは未定です。

 なお、今回のコメントはあくまで個人的な主観と思い込み100%で書いています。参考とか、「こいつアホなこと書いてる」程度の認識でお願いします。

今日はこれでおしまい。お疲れ様でした。

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